2009年4月13日月曜日

卵と壁と、田中康夫と。

私は村上春樹さんの作品が好きである。会ったことも、直接話したこともないけれども、エッセイなどからうかがえる村上さんの人となりも、(コールドプレイを聴いてしまう事以外は)とても好きである。でも、世界には村上さんの作品を、村上さんをあまり良く言わない人もいるし、むしろ嫌悪を示す人もいる。それは、それで仕方のない事であると思う。わたしだって、ベストセラー作家と言われている人の作品を、何度読んでも、新作を試しに読んでみても、どーしても好きになれない事がしばしばある。世界は然ういうモノなんだと、思っている。
しかし。
You Tube で新党日本 田中康夫News を観て、ただただびっくりしてしまった。
田中康夫氏は、村上さんを、作品を、好きではなくて、評価もしていないのでしょう。それは、仕方がない、読み終えての感想は個々人違う。しかし、彼は、鼻の穴を膨らまして、村上さんが80年代後半に出した作品の批判をしまくり、最後は、「ノーベル賞を貰うためにはエルサレム賞を欲しかった。」と閉めている。「欲しかったのではと私は思う」と閉めるのならまだしも、「欲しかった」って???。その言い回しで、わたしはすっかり新党日本代表の田中康夫氏の人となりを疑ってしまった。イスラエル賞は作家に与えられる賞であって、田中氏が細かく批判した、80年代後半の「ノルウェイの森」に与えられたわけではない。そして、 「イスラエル賞受賞者がノーベル文学賞を取る確立が高い」と言われていても、それぞれ別の賞であり、選考者だって違うと思う。政治家として、村上さんがイスラエルへ行った事を批判するのならば、理解できる。でも、私には、田中氏が作家(の端くれ)として、村上さんに嫉妬しているようにしか映らない。村上さんのイスラエル賞のスピーチに対しても、田中氏は「卵の側に立つのはあたり前の事」だと。きっとあのスピーチの内容、映像は、日本の過熱な報道により、勝手に解釈されたものが報道され、一人歩きしてしまった部分もあったのではないかと、わたしは想像する。その勝手に解釈されたもの(You Tubeによる、日本の報道番組)を、そのまま私も受け止めたら、現在の第2次世界大戦で大敗したあとの日本で教育を受けている者の中では、「卵の側に立つこと」はあたり前に選択される事であるかもしれない、と私は思う。しかし、世界では壁の側に立つことがあたりまえの世界が有り得るのではないだろうか。田中さん、あなたはビッグブラザーが支配する世界で、「ビッグブラザーなんて、存在しない。」と、言う事ができますか? どれだけの人が、壁に立つことが正しい世界に足を踏み入れ、「私は卵の側に立つ」と言うことが出来ると思いますか?私は、イスラエルを旅してみたいけれど、今の状況では無理と、足を踏み入れる勇気もありません。

  「村上春樹はノーベル賞のためにイスラエルへ行ったのでした」と自信満々で言う、田中康夫氏。村上さんを好きか、嫌いか云々ではなく、こんなに、極論を平気で言える政治家なんて、私は支持することは、まず出来ない。

その後、あまりに自信満々の田中康夫氏の「なんとなく、クリスタル」を日本へ帰国したときに、図書館で借りて読んでみました。過去10年近くも貸し出し記録のない本。田中さん、他作家の現在も世界中で読まれている80年代後半の作品を批判する前に、(絶版にするとか)自分の作品をどうにかしたほうが良いのではないでしょうか?この作品を読んで、(田中氏のように、ひとつの作品で作者というものを断定してしまうのならば)私は田中康夫という人は、名誉とか賞とか、喉から手が出るほど、欲しい人ではないかと感じました。

6 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

まったく同感です。田中康夫の嫉妬丸出しの恥ずかしい発言だと思います。

匿名 さんのコメント...

俺も同感。
なんというか恐怖すら感じる。
大きな声さえあれば、広く多くの人にもっともらしく自分の歪んだ主張を喧伝できちゃうシステムを実際にこういう人(大きな声をもっている人)が使っているということに。

匿名 さんのコメント...

こんにちは。田中康夫氏のコメントを見て、ショックを受けて、色々検索するうち、こちらのブログにたどりつきました。他の方も言っておられますが、あの様が人が政治家だったり、知事になったりするかと思うと怖いです。
他のページも読ませていただきました。楽しかったです。私も海外(アメリカ)在住です。

Shimauma さんのコメント...

そして、私がどう考えても、フェアではないと感じたのが、新党日本のウェブサイトにも、youtubeにも、あの田中氏の発言を見た者がコメントを投稿することができないという事です。「おかしい事は、おかしいと言う」と言う田中氏。田中氏のおかしいところを、誰も彼に示唆することができません。

春樹さんの、新作、早く読みたいです!

匿名 さんのコメント...

田中康夫さんの村上批判は二重にすごい。一つは論点が作品の文学的価値とは無関係なこと。二つは読解力の無さだ。原作『ノルウェイの森』では、ちゃんとこう書いてある。飛行機が着地を完了してからビートルズの『ノルウェイの森』が流れ始めた。スチュワーデスが僕に語りかけるのはビリー・ジョエルの曲に変わる頃。「僕があの草原のなかにいた」のは、『ノルウェイの森』が流れている頃(この時スチュワーデスは来ていない)なのだ。

匿名 さんのコメント...

エルサレム賞受賞式への出席については村上春樹氏本人がインタビューのなかでコメントしている。その中でも、もっともリアルだなと思ったのは、もっと踏み込んだ発言をしたいという思いがあったが、現地に言ってみるととてもそんな雰囲気ではなかった、ということだ。「卵を握りつぶすくらいのパフォーマンスを」と要求する女性を田中氏は尊敬しているそうだが、それはあまりに不当な批判ではないだろうか。「自らは安全なところにいて」とは誰のことか。